背景
インドの物品・サービス税(GST)は2017年の導入以来、複雑な間接税体系を統一してきましたが、多段階の税率構造や煩雑な登録手続きが事業者の負担となっていました。2025年9月開催のGST評議会では、制度の分かりやすさ、公正さ、持続可能性を高めるための大幅な改正が決定されました。
税率の整理
これまで0%・5%・12%・18%・28%と5段階に分かれていた税率が、「5%(軽減税率)」と「18%(標準税率)」の主要2分類に集約されました。加えて、基本生活品への0%免税は維持され、40%の高税率が新設されました。これにより、制度の簡素化と予測可能性の向上が図られています。
- 5%(軽減税率):生活必需品、農産物、医療・教育関連用品など、日常生活に欠かせない品目に適用され、家計負担の軽減と消費喚起が期待されます。
- 18%(標準税率):家電、車両、耐久消費財など、一般的な商品・サービスに適用され、市場全体の一貫した税負担を確保します。
- 0%(免税枠):教育書籍や医療用品などの基本生活必需品については、引き続き免税が適用され、社会的配慮が維持されます。
- 40%(高税率):タバコ、高級自動車、カジノ・ギャンブルなどの嗜好品や贅沢品に適用され、消費抑制と財源確保を目的としています。
新税率は原則として2025年9月22日から適用される見込みですが、個別の物品における具体的な適用税率変更については、今後の詳細な公表を待つ必要があります。
登録・還付制度の刷新
改正では、事業者登録や輸出還付の仕組みが大幅に見直され、中小事業者・新規参入者・輸出企業にとって負担軽減となる内容が盛り込まれています。
- リスクベースの仮登録:当局がリスクプロファイルを用いて申請者を分類し、低リスク事業者には最短3営業日以内で自動仮登録が付与され、事業開始までの遅延を防ぎます。
- 簡易登録制度:ECを利用する小規模サプライヤーや、月間課税売上が25万ルピー程度以下の事業者が対象となります。入力項目や提出書類を大幅に削減し、参入障壁を下げています。
輸出還付の迅速化:低リスク輸出者には還付額の90%を仮払いとして早期支給されます。さらに、小口輸出(郵便・宅配便での少額出荷)も還付対象となり、資金繰りの改善と国際競争力の向上に貢献します。
これらの改正は2025年11月1日以降、段階的に施行されます。
今回のGST改正により、税務処理の効率化や資金繰りの改善、中小企業や新規参入者にとっての利便性向上が期待されます。改正内容の詳細や個別の影響についてのご相談は、AsiaWise会計事務所までお問い合わせください。