企業における内部監査の役割
筆者は、内部監査部門は単なる監視役、ではなく、経営の健全性と透明性を内側から支える重要な機能であると感じています。形式的な制度対応を超えて、未然防止と信頼の礎を築く役割こそが本質です。経営と対峙し、時に苦言を呈する勇気が、企業の持続可能性を支えると信じています。
内部監査部門が直面している現実
しかし、現実の企業組織において、内部監査部門の地位が高いとは言い難いのが実情です。業務の内向きな性質ゆえに、現場や他部門から軽視される場面も散見されます。
たとえ形式上は独立性を有していても、その説明責任の相手は社内に限定され、社外からの正当な評価を得る機会も乏しい。その結果として、監査本来の実効性が損なわれ、部門としての存在意義や影響力が希薄になっているのではないか――筆者はそう感じています。
一方で、不正や不祥事といった「有事」が発生した際、現場・そして管理部門にのしかかる負担は計り知れないものがあります。監査法人、株主、規制当局といった外部ステークホルダーへの説明対応には、平時には想像もつかないほどのエネルギーとコストを要します。それは企業経営にとって、極めて明確な損失であり、場合によっては信頼や市場評価を一瞬にして失うリスクを伴います。 そして皮肉なことに、有事が明るみに出たその瞬間から、内部監査部門の機能不全や不備が厳しく問われるのです。
さらに言えば、第2線の管理部門は通常業務に追われ、モニタリングへの十分なリソース配分が難しいのが実情です。外部監査法人も、予算や人的制約から、制度上の要件を満たすことに重きが置かれがちで、実効性は後回しになりやすく、JSOXでも形式的な対応に陥っていることが少なくありません。
筆者がこれまで関与してきた事例の中にも、特に海外拠点では、外部監査人による会計対応済であるにもかかわらず、財務報告の誤りに至る不正や不祥事が発生し、結果的に内部監査部門の機能不全が問題視されたケースが存在します。このような現実は、「監査が入ったから安心」とは決して言えないことを物語っています。
最後に
今後のコラムでは、内部監査部門がより実効性を高め、特に海外拠点において、不祥事の未然防止、たとえ発生したとしてもその説明責任を果たすために、いかなる視点と仕組みが必要なのか、具体的な論点を取り上げながら考察してまいります。